2015年8月12日水曜日

「サントリー 登美の丘ワイナリー」訪問レポート

 
 

2015年7月某日、ジェノスグループ株式会社・営業スタッフは、社内研修の一環として、メーカーさんのワイナリーを見学させて頂くこととなりました。当日は、これまでの梅雨空がまるで嘘だったかのような晴天に恵まれ、少しだけ日頃の行いがよかったのかな? などとくだらないことを考えながらバスに揺られること約3時間、私たちはサントリーの経営する「登美の丘ワイナリー」に到着しました。
正直に言うと、個人的にフランスや日本で数多くのワイナリーを見てきた私にとって、今回も同じような施設なんだろうなとタカを括っていました。しかし、ワイナリーに近づくにつれ斜面は急になり「これはちょっと他のワイナリーとは違うぞ」と、斜面を登れば登るほど私の好奇心も一緒に高まっていきました。

        

ワイナリーに到着するとそこには「登って美しい」ワイナリーの名にふさわしい素晴らしい眺望が。山の斜面には無数の葡萄畑。今回は雲に隠れがちでしたが富士山や八ヶ岳、南アルプスが望める絶好のロケーション! ワイナリーに到着してからわずか数分のうちに、登美の丘ワイナリーの風景に心を奪われてしましました。

        
▲ 心の綺麗な方にはうっすらと写る富士山が見えるかも!?


素晴らしい眺望を満喫した後は畑を見学。すでに葡萄がたわわに実り、樹の上には日本独自の雨除け用のレインカットが施され、地面は雑草が生い茂っています。雑草が表面の水分を吸い取り、葡萄の樹は地中深くにまで根を張ることで様々な栄養分を取り込むため工夫がされていました。

        

畑での説明を受けた後は、樽の熟成庫を見学。そして、山の斜面をくりぬいて造られたカーヴはフランスでも中々お目にかかれないほど本格的なもの。ワインが安定した気温と湿度に守られ、出荷を待ちわびるかのように眠っていました。カーヴは長く続き、歩くとそこかしこに年代物のワインが!! 1966年や1975年といったマニア心をくすぐるワインもあり、一生に一度で良いから日本のオールドヴィンテージを飲んでやる! と心に決めたのでした。

        

最後はお楽しみのワインテイスティング。試飲したのは、登美の丘ワイナリー 甲州、シャルドネ、登美の丘 赤、そしてフラッグシップワインの登美・白と登美・赤! どのワインにも日本らしい繊細さやキメ細やかさ・優雅さを共通して感じ、世界のどこへ出しても決して恥じることのない、日本でもこんなにも素晴らしいワインが出来るんだぞということを証明してくれました。

        
▲ テイスティング後には、登美で造られる貴重な貴腐ワインを!!


約2時間の研修を終えて感じたのは「日本人の情熱」。1900年代初頭に登美の丘ワイナリーの前身となった「登美農園」を開園した小山新助氏、その後経営を引き継いだ「日本のワインぶどうの父」川上善兵衛氏と寿屋(現サントリー)の創業者、 鳥井信治郎氏。彼らから脈々と受け継がれる「ものづくり」へのこだわりに思いを馳せながら次の研修へ向かうのでした。




「サントリー 白州蒸留所」訪問レポート

 
登美の丘ワイナリーを後にし、昼食にいただいた「山梨名物 ほうとう御膳」でお腹を満たされた私たちが、次にやってきたのが白州蒸留所。ここは緑の木々と様々な野鳥の声に囲まれた、世界的に見ても珍しい森の中の蒸留所です。
花崗岩(カコウガン)層によって、約20年もの長い年月をかけて磨かれ造られる水が、ミネラルウォーターとして知られている南アルプスの天然水…その天然水工場と隣接している白州蒸留所でウイスキーが造られています。

        

かつて蒸留が行われていた工場を改修した施設で簡単な説明を受け、早速向かったのは発酵室。原料を発酵させビールのような液体を作る部屋なんですが、施設に入る前から あま~い 香りが漂っていました。
中に入るととても蒸し暑い! お世辞にも人間にとって心地の良い室温とは言えませんが、酵母にとっては発酵に不可欠な温度であり最適な空間なのだそうです。

        

木製なんです、タンクが!
ステンレスだと想像していたので、これには驚きました。写真だけ見たら日本酒の蔵見学にも見えますが、中に入っているのは元気に泡を立てるビールのような液体でした。木の桶を使うことによって、白州に居つく天然の酵母の力も借りられるのだとか。

        

次に向かったのは貯蔵庫。発酵された原料は蒸留を経て、樽の中で長い年月を過ごします。
樽は木製である為、呼吸をします。そのため水分やアルコール分が蒸気となって少しずつ樽からしみ出ていき、中のウイスキーは自然と減ってしまいます。しかしその呼吸と共に樽の香りなどを取り込みウイスキーはより熟成されていきます。
ギブアンドテイクともいえるこの現象を「天使の分け前」などと呼ぶそうです。貯蔵庫は樽から揮発されたウイスキーの香りで満たされていました。天使にわける分を少しだけ横取りしてきました。
蓋の部分がアクリルで出来ている樽は約5年程経過したものだそうです…だいぶ持っていきますね、天使。ちなみに広大な蒸留所の敷地のほとんどが貯蔵庫なのだとか。

        

最後はテイスティング!
今回は、5大ウイスキー(アイリッシュウイスキー、スコッチウイスキー、カナディアンウイスキー、アメリカンウイスキー、日本ウイスキー)の飲み比べをさせていただきました。それぞれを個別に味わう事はあっても、5大ウイスキーを一度にテイスティングできる機会はなかなかありません。
テイスティングの方法は1:1の水割りです。そうすることでウイスキーの香りや甘みが引き立ち、より明確な違いが感じられるとのこと。色・香り・味わいなどについて詳細に解説していただいたことも相まって、各ウイスキーの特徴が面白い程にわかり有意義なテイスティングを行うことができました。個人的な好みとしては…カナディアンウイスキーと日本ウイスキーがお気に入りでした。

10年以上の時間をかけなければ完成しないウイスキー…そのウイスキーを造る工程のうち人ができる事はとても僅かで、ほとんどが自然の力なのだということを改めて学びました。
水、酵母、そして人…その他すべてが重なってウイスキーを造り上げていることを肌で感じ、たまたま蒸留所を建てた場所が森だったのではなく、このウイスキーを造る為にはこの森で造らなければならなかったのだ、と思いを馳せつつ…ほろ酔い気分で帰路に就いたのでありました。